以下ネタバレと感想
ガリレオ映画3作品目!
ガリレオはドラマから見てたんですが、何年前か考えるのも恐ろしい。
いきなりEDの話をしますが、ドラマや過去映画の映像が流れるので月日経つ早さエグ…という謎のダメージを受けます。過去湯川先生の髪の毛モッサモサやな。。。
●ストーリー
あらすじ書こうとしたけど難しいんだが??ということであらすじは上記リンク参照ください…!
過去事件起こしてるのに完全黙秘で無罪放免になった最低クズ野郎がまた事件起こしたがまた完全黙秘で釈放される。が数ヶ月後に変死体で見つかる。この事件の真実は?
という感じです。雑ゥ!
ミステリでは「誰が」「どうやって」「どうして」殺したかが重要になってきますが、沈黙〜ではこれらが二転三転します。
物理科学トリックよりもヒューマンミステリーに重点が置かれているので「どうやって」の部分は過去映画では一番ライトだったと思います。容疑者Xや真夏の方程式に比べるとマジで物理科学の影が薄い。
過去の事件も絡むので全体的にボリュームがあるのを映画として情報圧縮してる空気を感じました。※原作未読です。
個人的には蓮沼(最低クズ野郎)と真犯人(と言っていいのか…)辺りの情報が思ったより薄めで、人間の悪性とか社会の底の闇で殴られると思い身構えて見たからアレ?意外と軽いパンチ…?とか思ってしまった人間です。最低や!
●キャラクター
・被害者はキャラではなく人間である
まず映画は殺された女の子・佐織の生まれた時から家族と商店街の人たちに愛されながら育っていく場面が冒頭で流れます。
これがあるだけで、佐織は「被害者という役割のキャラ」から「一つの人生を生きてきた女の子」であることが見てる側に伝わるんだなーと思いました。だから、この時間が惨いこと、多くの人に辛く苦しい傷を残すことが理解できる。
でも、愛されて期待されていたからこそ佐織はプレッシャー感じていたんだなとも思わされるし、愛されていたからこの話の事件が起きてるのは何というか。うーーーん。ってなる。
・湯川先生がだいぶ人間らしい
普通にお祭りを楽しむし、普通に街の人たちと楽しそうに交流する。
ブランクが長いから違和感かんじにくかったけど、ドラマや過去映画見返してたら沈黙〜の湯川先生はだいぶ人間みがあるwww
でもこの作品は湯川先生の友達である草薙さんが過去を乗り越えるのも話の主題になってるから、その影響もあるのかもなぁとか思いました。人の心に寄り添うver.湯川先生。
友人関連だと湯川先生は容疑者Xで辛い目に遭ってるし今回その後悔に言及してる台詞もあったしね!
・犯人について
蓮沼というどうしようもなく底辺クズでそこそこ知恵がある分人間として最悪に質が悪い奴が犯人なんですが、観終わってから私はこういう系の犯人について知りたがるとこがあるんだなぁとか思いました。
映画だけだと草薙さんが写真見ただけで吐いちゃうくらい、というのがちょっと曖昧だったかも。吐いちゃうくらいなのは蓮沼が起こした過去事件の被害者のお母さんが自殺しちゃったとかそういうの含めた自責が強そうでもあるけど。
この映画では蓮沼は底辺クズ野郎であることがわかるんですが、何故そうなったのか…生まれなのか環境によるものなのかその両方なのかはわかりません。過去の事件の詳細もほぼ語られず「そういう事件がありました」程度。今回の話にはそこは重要ではないのも観ててわかる。
…んだけど最近何となく、人間的にも社会的にも最底辺クズなキャラを見るとどうしてそうなったのかを考えてしまう。別に何が悪かったのかとか原因を探すのではなく犯人の人生も知りたいなとか思ってるんですよね。なんでだろ。
●真犯人とトリック
トリックは液体窒素(佐織の父の幼馴染で親友の男性が店で使っていたものを使用)を蓮沼の部屋に新倉(夫・佐織をプロデュースしていた。殺害実行動機は後述)がブシャーして窒息死させたというシンプルなもの。
湯川先生登場の前振りでシャボン玉の動きが〜とかこの技術は折り紙を参考にしてる〜とかありましたが特に関係無かった…。物理は添えるだけ……。
蓮沼と同居していた男・増村が実は過去蓮沼が起こした事件の被害者少女の母親(蓮沼の無罪判決後自殺)の縁者だった!はまだわかる。割と唐突だと思ったけど。
佐織の一家がやってる店で腹痛になった客が新倉(夫)の手配した役者でした!はエッ!?ってなった。そこ真っ先に調べてると思っててそれまで何も触れられてなかったから偶然かと思ってたよ…。
家族だけでなく街の人が関わっていることや蓮沼を殺害実行した人、まではわかったけど、「誰を庇っているか」はわからなかった!
私は佐織の妹ちゃんが真犯人?!と考えてました。真夏の方程式みたいな感じで。結果見事にミスリードにハマったw
実行犯は「そこに椎名桔平さんがいますよ!」って感じでわかりやすかったですね〜
でも真犯人…というか実行犯が庇っていた人についてはわからなかった。何で庇ってたのかも含め後出し情報すぎるので推理は難しい…か??
尺の関係で佐織が新倉夫妻から受けてたプレッシャーというのがイマイチ伝わってこなかった分、言い争いからの沙織負傷(新倉奥さんは殺害したと勘違いしてしまった)は割と唐突に感じました。
佐織もいかに本人の自由とは言えもうデビュー前提で色々進んでるのに婚前交渉で出来ちゃったので辞めたいはちょっと無責任だろとも思ったよ……(※私ができ婚積極肯定派ではないからなとこあります)
でも本人、夫妻は勿論だけど家族からも街の人からも彼氏からも期待されてたのを常々プレッシャーに思いながら言い出せなかったんだよな。自分が求めて走り出した夢だから余計に。
やってみなきゃその辛さはわからないとこがある。結論として、話し合って〜〜〜〜なるべく冷静に〜〜〜………。
・「沈黙」について
実行犯は殺すつもりだったけど犯行に関わった街の人たちは佐織を殺したという自供が欲しかったのと懲らしめるだけのつもりだったというのがね…
窒息死については、うーーーん、拷問以外だと苦しい死になる、のか、??
蓮沼みたいな犯人には生ぬるいくらいではとか思ってしまうの、最近コミックスとかでもスナック感覚的に復讐のために拷問ザマァ系の広告が流れてくるから私が麻痺しちゃってるのかな。それはそれで怖い。
実行犯含め街の人たちは蓮沼のように沈黙を最後まで続けられなかった。
これ1人くらい黙り続ける人がいても良いのでは?とも思うけど蓮沼との悲しい対比なのかなとか思いました。
己の犯した罪について沈黙を続けることはすごく辛く難しい。善き人でも邪な心を持ってる人でも。蓮沼はその点、まともな人間性を欠いていたから全て己の欲のために沈黙できてしまう。街の人たちは無理だった。そういうことなんじゃないかなぁと。
それでも誰かのために皆が沈黙しようとしたのが悲しい。
●結末
結局、新倉奥さんが激昂して佐織を突き飛ばして昏倒させた時には佐織は死んでおらず、犯行現場を目撃し強請を目論んだ蓮沼が本当は生きていた佐織を殴り殺した。蓮沼マジクソ野郎。ということだったわけで。
事件に関わった街の人はほとんど実刑などはくらってないし、新倉奥さんは佐織を殺したという罪悪感からは解放された。それぞれがそれぞれの道を行けそうな未来が描写されていました。
新倉旦那さんの方は…元の計画の「脅すつもりで殺意は無かった」からの、奥さんのために「殺意が明確にあり殺害を計画していた」ことを認めることになるので罪が重くなるという感じですが…。
容疑者Xも真夏の方程式も最後は酷くやるせない終わりだったり、変えられない過去がいずれ追いついて苦悩する日が来るだろうみたいな締め方だったので今回は真実が二転三転して混み合いながらも映画シリーズではかなり救いのある終わりだったんじゃないかなと思います。
●全体
物理科学要素かなり薄い(今時液体窒素トリックは特別理解要素高めでも無いよなぁみたいな)のと、草薙さん効果?で湯川先生の変人度がかなり抑えられているのとで、ガリレオシリーズでやる必要あったんか…?とは若干思った。
事件も誰がどうしてどのように、が全て混み合ってる分、それぞれの要素が薄めに感じました。
多くの事実がとっ散らからずにまとまっているけど、だからこそ容疑者Xや真夏の方程式みたいにガツンとくる重さは無かったかなぁ。
東野圭吾先生の作品だと最後に触れたのが「祈りの幕が下りる時」とか「さまよう刃」だったので、こう、人間的にクズ過ぎる奴がやらかしたことが発端で周囲が苦しむ感じがじっくり描かれていて辛ぁ…と思いつつ、今回の沈黙のパレードにも似たような辛さを無意識に求めていたような気がします。
(先にも書いたように蓮沼のあのクズぶりがどう形成されたのかとか実は興味ありました。そこ描いてる隙間無いくらいには事件内容が混線していた)
だから劇場で見終わった直後はちょっと物足りなかったかも、と思いつつこうして書き出してみるとかなり救いがある結末で、これはこれで良かったなと改めて思ったりしてる。
異父妹の仇を取るために蓮沼に近づき同居まで漕ぎ着けた増村や、蓮沼自身の背景、蓮沼の過去の事件の詳細、新倉夫妻の沙織にかけた愛と重圧と束縛……
複雑に絡んだピースのひとつひとつが結構な大きさで、抜き出してテーマにしたらまた別の話が広がりそうで。
それらを適度にまとめて一本の話の尺に収められていたのはすごいと思う一方、先生によって丁寧に深堀りされた奈落の落とし穴に落ちてみたかったなぁという気持ちが少し、という映画でした。
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