【感想】葬儀屋にしまつの民俗異聞

本屋さんで気になったので読んでみました!
夏といえばやっぱりホラー小説!!

以下ネタバレあり感想です。

・ストーリー
由緒ある葬儀屋家業を引き継ぎ、ちょっと特殊な葬儀を執り行う似矢西待(にせやにしまつ)と、西待に憑いて回り民俗学や葬儀の蘊蓄を語りアドバイスする幽霊にして西待の兄・東天(あずま)のオカルティックミステリー。
葬儀屋×民俗学というムラ系オカルトがっつりなテーマ。
民俗学知識、歴史解釈などがありおもしろかった!「ミシラズ」の回で語られるザビエルの話は日本史で誰もが名前を知る人物でありながらどういう人であったかは西待同様知らない人が多いと思うのでおお〜なるほど!となりました。


・キャラクター
東天が出た時「おっ出たな古めかしい口調と学ラン(女性ならセーラー服やゴスロリ)の奇抜な性格した美形!」と手を叩いて喜びました。
一話では終盤まで一応死んでることが伏せられてて最後ネタバラシ、という形式になっていますがこの手のパターンはオタクは他作品で赤ペン先生やってるので序盤で気づいた人も多いのでは?
正直もっと人非人みたいな性格かな?と思っていたので普通に西待を気遣ったり、女性蔑視を根底にした宗教作法に嫌悪感を示すなど割と良識ある兄幽霊でした…。
西待は美形で何でもできて両親からも期待されてゆくゆくは継ぐはずだった家業も心の底から楽しんでいた東天のことを疎ましく思いつつ憧れていた、という複雑な心情抱えています。
なので根本は良き兄弟なのかもなーと思ったり。
私は甲田学人先生のホラーシリーズに脳みそ浸ってるのでもっとドロドロした兄弟関係かと予想していたから良い意味で外れたw
でもちょい甲田学人先生のホラーシリーズと似てるとこあるなとは感じます。※個人の感想です!
断章のグリムでは妹の雪乃に姉の風乃の亡霊(ゴスロリ美人しかし狂っている)が憑いていますし、ノロワレでは弟の現人が心の底から嫌っている兄・夢人(クラシカルなファッションと口調の美形しかし性格捻じ曲がってる)がいますし。


・ホラー?オカルト?ミステリー?
一番怖いのは生きた人間、のセオリーは踏んでると思います。
主人公が葬儀屋なので、死が近く、弔うという儀式は生者のためというスタンスとマッチしてる。
西待や協力者の里見姉弟など、現代の若者っぽい口調など意識してるし、東天も奇抜なキャラクター設定ながら価値観も現代寄りに書かれています。
ここら辺でホラーっぽさ薄れてるかなと個人的には思いました。
東天は特に、民俗学知識には個人の価値観持ち込まなそうとか勝手に思ってたので。若干作者さんの考え滲んでたのかな?
西待の目的…「兄の死因を解明する(兄を殺した者を探す)」というのがあるのでここはミステリー要素高め。
民俗学やオカルト知識が散りばめられているので読者も考察と推理しながら読めて楽しい。

以下各章の感想とか。

「黒塚」
東北に伝わる怪談を下地に作られています。
展開はわかってるけどこれは怖かった!むしろ展開わかるからこその怖さですね。
奥さんの死体の様子は甲田学人先生の作品で耐性あるから耐えられました。もっと、こう…ナニとはいいませんが、うじゃっと湧いてる描写くるかなとか構えてたので………(それ以上はいけない)
結果的に葬儀屋知識炸裂して正気にかえった夫さんが良い人だったので事なきを得てホッとした。
でも妊娠悪阻の死ぬレベルのやつってあんなものかなとも思ったり。うーーーん。ここら辺はうまくぼかされてます。そもそも奥さん妊娠してたの?って感じにフワッとさせてる。

「ミシラズ」
ここにtrickの上田と山田を派遣しようの回。
隔絶された島!かつてリゾート今閑古鳥!とっても優しいけどなんか不穏な島民!隠れキリシタン!ダ・ヴィンチコード!みたいな。だいぶ違うか。
隠れキリシタンと依頼人の名前でピンとくる人多そう。みんな大好き13人目の裏切り者ですよ。
ここで里見環という協力者1が登場します。環お姉さん。なんと東天の声が聞けてぼんやりながらも姿も見える。東天、幽霊なのに割と視認される。
脈々と受け継がれる陰湿な悪意というテーマで、
依頼人の家系の墓に収められている遺骨全てに島民からの執拗な嫌がらせがされていた描写はもっとエグくても良かったかも。
骨壷に落書きとか生ごみ入れるとかやってること小学生かな?!だった。お前らの悪意はそんなもんか?!みたいな。まぁ先祖時代からの恨みは殆ど薄れてるのに伝統として受け継ぎつつ「あれは公然と虐めて良い奴」という観念は残って都合よく使ってるので小学生以下並みなのは確かなのか。

「鬼のとむらい」
協力者2、里見です。環姉の弟くん。寺の息子で将来は住職、霊感もあって東天のこともばっちり見える、霊障関連で本気出す時はメガネを外す男。
この回は色んな民俗学やオカルト方面知識のパッチワークで構成されてるけど、「半端な知識を執念で補い色んな儀式ちゃんぽんして死んだ子を蘇らせようとした狂った母」という点では2ちゃんねる発祥ホラーの「リゾートバイト」を参考にしたんじゃないかな?
リゾートバイトは儀式がいかにもそれっぽく、かつ詳細や正確な儀式手順は「実行者が素人だから」ということでうまくぼかされてて、それが余計に生きた人間の執念を浮き彫りにして怖さを増してるので。
しかし冥婚の「結婚できないのは成仏できないと思われるほどのこと」、という価値観について誰も突っ込まなかったのは意外だった。
実際にある奇怪な屋敷もテーマに織り込んでいておもしろかった〜
あと東天にいさんは霊力?枯渇すると胸に飾ってある椿の花のみになるという、まさかの「眼鏡が本体説」のアクセサリーバージョンという笑
東天兄は自殺ではなく殺された、その犯人を見つけねば、ということを一人心の闇として持っている西待くんですが…東天兄の素振りが少々謎めいているので、もしかしたら真実は西待くんが苦しむようなものなのかもなーとか思ったり。
ラノベホラーに飢えていた身なので予想以上にとても楽しめました!
一応続きそうなフックを残して終わったので続編期待しても良いのかな?!
黒塚の雰囲気が好きだったのでああいうのをもう一本また読みたい!(美味い!もう一本!)

0コメント

  • 1000 / 1000